梅雨じゃなくても湿気ってる。

思い付いた事を、気が向いた時に書いてます。

夢の記録③2021/3/19

 私は左官見習いをしています。今日は会社の事務所から女性の先輩2人と、3人組で現場へ向かいます。通常は、事務所から皆んなで一緒に現場へ向かう事は無いのですが(基本的に現場へは1人で、直行直帰です)その日はどういうわけか、そういう事になっていました。

事務所で、会話をしながら作業着を選びます。

作業着は毎回同じなのに、何故かその日は3人で、何時間もかけて、いちいちお喋りしながら選びました。先輩2人はカーキ色で超超超ロングのニッカポッカを選び、「あなたも同じやつにしなよ」と言われたので私も同じ物を選びました。ニッカポッカは、格好良いな と思う反面、幼い頃、私に暴行を加えてきた人間がすごく長い(少なくとも超ロング以上だと思います)ニッカポッカを穿いていたのと脚の短い自分には似合っていない気がするので、あまり穿きたくありません。

 腰に装着した道具が歩く度にガチャガチャガチャガチャ鳴ります。私は、現場で着けたらいいのに何故今直ぐに付けるんだろう、邪魔ではないのだろうか?と疑問に思いましたが、見習いなので「先輩の言う事は絶対」だと逆らいませんでした。

長いこと作業着を選んでいたからか、事務所を出た頃にはもう午前9時を回っていました。普通なら作業を始めている時間です。

事務所から駅までの道のりを、3人でお喋りしながら歩きます。

「さっきからカチャカチャうるさいね」

「これ持ってきたけど今日絶対要らないよね」

「どうして持ってきたんだろうね」

本当に、そう思います。

事務所から駅までの風景が、いつもと違います。しかし、見憶えのある風景です。見憶えが、というより、これは私が小学校中学年から成人する迄のそこそこ長い期間を過ごした懐かしい街の景色そのままです。今日の現場は確かこんな場所ではなかった筈なのに、一体どういう事でしょうか。

そのまま歩き続けていると、公民館が見えてきました。この公民館には室内プールが併設されていて、それこそ小学生の頃は、数え切れないほど通いました。プールで泳いだ後には毎回ロビーの自販機でアイスを買い、生乾きの髪を肩に垂らしたまま、ロビーの(予算が無くて買い換える事が出来なかったのか所々破れ、ガムテープで補強してありました)ソファに座って食べていました。あの自販機はまだ在るのでしょうか。

公民館の入り口から、一台の白いワゴン車が公民館の向かい側の道路に向かってゆっくり出てきます。3人でワゴン車が移動する様子を眺めていると、(夢の中の自分たちはどうしてこう、不可解な行動を取るんだろう)後部座席の窓が開いて、其処から小学2年生くらいの男の子が顔を出しました。男の子は拡声器を手に持って、「おとうさんは、これからゆっくり、お仕事に行きます、ゆっくりだので、車も時間がかかります、とてもゆっくりです」と大きな声で、拡声器を使っているので当たり前ですが、大変に大きな声で言いました。

運転席をよく見るとその〝おとうさん〟らしき男性が居て、どこか申し訳なさそうな、しかし、ニヤニヤした顔でこちらを見ています。

「子供に言わせるなんて何考えてるんだろ!」と、先輩が怒った顔で言いました。

私もそう思います。

ワゴン車は、完全に公民館の敷地内から出ると、突然道路の真ん中でストップしました。

「危ない!何考えてるんだろ!」先輩は、再び怒った声で言いました。本当に、そうです。

ストップしたワゴン車の中から、白いふわふわしたワンピースを着た、髪の長い女の人が出てきました。頭に色とりどりのお花でできた輪っかを載せて、生後10ヶ月くらいの赤ちゃんを胸に抱き抱えています。「わたしたちは、これから、行かなくてはいけません、この子と一緒に、行かなくてはいけません、」拡声器の男の子に負けないくらいの大きな声でそう言うと、女の人は胸に抱いた赤ちゃんを頭の上の、お花の輪っかを載せたところより高く掲げて、それから、とてもゆっくりした動作で、赤ちゃんを道路の上へ置きました。

何故だかわかりませんが、夢の中の私はその時、「自爆テロだ」と思いました。そして、2人の先輩に、「自爆テロです、爆発します、逃げましょう」と言い、2人を連れてその場を離れようとしました。道路の真ん中に棒立ちになる女の人のことも、道路の真ん中に置かれた赤ちゃんのこともそれ以上、見ていられませんでした。

道路の2人から背を向けた直後、

パチュンッ! と、大きな水風船が割れたような、何か、お水をたくさん含んだものが弾けたような音が響きわたりました。

「破裂した!」そう思いました。

私の右隣に居る先輩は、私と同じように、後ろを全く振り返ることなく、ただ項垂れて

「うそでしょ、うそでしょ」と、つぶやいています。私の左隣に居る先輩は、道路に棒立ちになる女の人と、赤ちゃんを、ずっと見てしまったのでしょうか。 ひゅー、ひゅー、と、まるで喉が破けてそこから空気が漏れ出しちゃったみたいな音を出して、涙をぽろぽろ零しています。私は、悲しくて、怖くて、気持ち悪くて、どうしようもなくて、その場を離れたい気持ちで一杯でしたが、左腕と右腕、それぞれを使って両側にいる2人をぎゅーっと抱き寄せて、とにかく今はこうするのが1番いいのだと思いました。